前田有一著「それが映画をダメにする」を読む
前田有一著「それが映画をダメにする」を読んだ。前田氏の「超映画批評」を偶然ネットで見つけたのは10年前くらいか、それ以来同サイトを読ませてもらっている。
基本的に氏と映画に対する考え、嗜好が似ているため、とても参考になる。これまで氏のオススメ映画で最近なら「パッセンジャー」「ハードコア」、ひと昔なら「バンテージ・ポイント」とその恩恵を受けた。そしてその数も多い。「ハードコア」に至ってはオススメマークだけを見て劇場へ行った程。
そんな前田氏が出版したのが「それが映画をダメにする」である。
我々がブログで書くような感情に赴く”感想"と違い、サイト「超映画批評」での作品に対する分析は冷静で的確だ。その上で本著はタイトル「それが映画をダメにする」にあるように、その作品と映画界が抱える問題を氏の視点で指摘する。
映画はその歴史から成熟産業と思われがちだが、時代の変遷に翻弄され、今尚変化を求められる。器用に対応するハリウッド(必ずしも全てではない)。だが邦画界はそうと言い難い。今なら「同じような恋愛ものが大量生産されている」と先日塚本監督が自虐していたが、問題点は多い。
本著でも邦画作品がいくつか採り上げられているが、各々の事情は内幕を知る氏だからこそ。単なる批判ではなく、それに対する回答でもある。またYahooニュースにもなった「進撃の巨人」に関する騒動にも触れている。炎上の連鎖を生んだ同作。ただ基本的に作品の質こそ問われるべきであり、その中での批評の重要性を挙げている。
個人的に日本国内における3Dに対する見解も同意だ。質の悪い3Dを見せられる程、ツライものはない。ここぞという時は劇場を選んで観てきたが、基本的に2D鑑賞だ。シネコン化で昔に比べれば映画館の質は向上したが、画質は館ごとのバラツキが大きい。特に施設規模に依存する3Dは顕著だ。
質は目に見えた品質だけでなく脚本、演技、コストパフォーマンス、製作背景とその意図に及ぶ。それらを総合しての映画。その問題提起として本著は読み進める度に興味深かった。映画の見方を深堀りしたい方にオススメの映画本だ。
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