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2016/11/12

「聖戦士ダンバイン」を観る

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 アニマックスで9月末から3ヶ月に渡って放送された「聖戦士ダンバイン」(HDリマスター版)を観終えた。放送当時、中学生だった頃。実は通っていた塾か何かのせいで本作をリアルタイムで観ていない。最終回の内容を「アニメージュ」で知ったくらいだ。でもガンダム以降の富野作品、当時のプラモ熱から興味は離れなかった(主役機プラモの金型改修騒ぎ等々)。多分最後まで見通したのは今回が初めてだろう。そんな思いから、大人になった今改めて「聖戦士ダンバイン」を観てみた。

 真夜中、バイクを飛ばすショウ・ザマ。だが光と共にその場から消え失せた。フェラリオ シルキー・マウの力でバイストン・ウェルと呼ばれる異世界に引き込まれたのだ。呼び込んだ地上人のテクノロジーとオーラ力(ちから)を使い、バイストン・ウェル征服を狙うドレイク・ルフト。そんなドレイクに異を唱えるニー・ギブンらと共にショウは愛機オーラバトラー・ダンバインで戦いを挑む。

 「ガンダム」「イデオン」「ダンバイン」に共通するのは人の業の描き方。「Gのレコンギスタ」を観た時に感じた富野監督自ら「子供向け」という言葉に反して難解な側面。富野節と呼ばれる、その背伸びした感覚こそが富野作品の魅力なのである。視聴者である子供たちに対し、考えるよりも感じろといったところ。単純明快なストーリーや勧善懲悪でなく、人間関係や葛藤こそが皆生きていく命題だと知らせている気がする。その点で「聖戦士ダンバイン」のキャラクターたちは最後まで生き生きと描かれている。

 反面、世界観構築の難しさを露呈する。宮崎駿をライバル視して「ザブングル」で少年劇、「ダンバイン」でファンタジーを描いた当時。のちのインタビューで作家性で負けたと回顧している。世界観を突き通せなかったゆえ、いち早い地上編への展開や融和しきれなかったメカデザイン(世界観を代表した秀悦な初期のオーラバトラーデザインに反し、中期以降の戦艦、メカ類はイマイチ)、「ザブングル」に続く主役機交代等、テコ入れが目立つ。

 結果、富野監督は収益面の失敗から再び「ガンダム」を作らざる得なかった立場に追い込まれた。そんな裏事情を知った今だからこそ、「ダンバイン」にはその混乱が垣間見える。今やバンダイナムコグループ傘下のサンライズ、スタッフロールに位置する「原作矢立肇 富野由悠季」は今も優れたビジネスモデル。子供心に分からなかったが、作品作りの裏に親会社の姿が欠かせないのは周知の事実だから。

 30年以上経った今でも「聖戦士ダンバイン」における混乱、カオスは物語、裏事情共々魅了する。コレジャナイ感と言われたビルバインのデザインも好きだし、ショウが初めて地上に出ての東京上空のバトルにハイパー・ジェリル、チャム・ファウ、そしてナの国の女王シーラ・ラパーナ。「皆殺し」と揶揄される物語の収拾も嫌いじゃない。当時、内外のファンタジーを見聞していなかった富野監督ながら、よくできていると思う。のちの数々のスピンオフ登場も頷ける。

ショウ「シーラ・ラパーナ、浄化を!」
3ヶ月、全49話を通し、おかげで浄化されました。

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