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2016/09/26

WOWOW連続ドラマW「沈まぬ太陽」を観終える

 5月から始まったWOWOW連続ドラマW「沈まぬ太陽」が最終回を迎えた。全20回、過去のWOWOWドラマでも類を見ない長期シリーズ。衝撃的だった御巣鷹山ジャンボ機墜落事故を扱いつつ、事故の当事者、巨大企業の闇を描いている。もちろん過去の山崎豊子作品らしく、フィクションというスタンスが劇後のテロップで触れられているが、推して知るべし。描かれるリアリティーの高さは視聴者をその時代の日本にタイムトリップさせる。

 国民航空の社員、恩地元は組合委員長を任され、社員の待遇改善に努めていた。だがその駆け引きで総理専用機の運航ストを持ち出す。権利を獲得した恩地だったが、会社側は委員長退任後、10年に渡り海外へき地勤務を強制する。これに加え、会社の息の掛かった新生労組を立ち上げ、優遇をダシに組合分裂を図っていた。そして1985年8月。国内勤務に戻った恩地にジャンボ機墜落事故の報が入る...

 物語は義のために進む恩地と、同じスタートから出世のため袂を別つ行天の二人を軸に進む。最初は単なる会社の腐敗構造と思いきや、その背後に現れる巨悪。そして再建を目指した新体制をも踏み潰す事になる。最終回、再び海外勤務を命ぜられる恩地の心情は、行天に宛てた手紙と共に本作タイトルと重なっていく。

 この作品を通して半官半民、フラッグキャリアである日航の体質に呆れると同時に、実は身の回り、社会の腐敗が投影されている事に気付く。長い物には巻かれろ、臭いものには蓋をする、甘い汁を吸う輩、悪意あるネガティブ感に溢れている。巧みな人物描写に善悪のコントラスト。このドラマの面白さはそうした色付けがキャスティングに反映されたところだ。特に会長篇以降、これでもか怒涛の悪党たちが登場する。

 ただ何より、前述メイン二人のキャスティングが素晴らしい。恩地=上川隆也の実直、ストイックさ、その成り行きは観る者を巻き込み、感情移入は絶大だ。時に息苦しくなる。一方、影の主役である行天=渡部篤郎の冷静な世渡り巧者ぶり、今や黒幕、ヒールを演じさせたらこの人の右に出る者はいない。行天の末路は一条の光であるが、後ろに控える巨悪は眠らない。

 扱いの難しい題材、長編ながら連続ドラマとして製作、放送したWOWOWの心意気に打たれる。この5ヶ月間、高いクオリティーを維持、視聴者の期待に応える出来であった。未見のWOWOW契約者であればオンデマンド、それ以外の方は今後ソフト化される機会に是非触れて欲しい作品だ。

 余談だが、本作に限らず山崎作品を観てきてリアリティーもさることながら、重厚な物語に魅せられる。もし今の日本を見た時、彼女ならどの題材をどのように描くだろうか。そんな果たせない夢想に駆られる。

160926


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