「ザ・ヤクザ」を観る
新年あけましておめでとうございます。
さて先日、日本映画専門チャンネルで放送、録画してあった「ザ・ヤクザ」を観た。シドニー・ポラック監督、ロバート・ミッチャム、高倉健共演による異色作。あの「タクシードライバー」や邦画「太陽を盗んだ男」のシュレーダー兄弟の手掛けた作品でもある。公開された1974年にして、トンデモ日本でないのはさすが親日家のシュレーダー兄弟。本作は東京、京都、仏閣と街、0系新幹線と70年代を象徴した描写も多く興味深い。音楽はGRPレーベルでおなじみデイヴ・グルーシン。
日本のヤクザ東野との取引に失敗したタナーは、その代償に娘を誘拐されてしまう。奪還を依頼されたハリー(ミッチャム)は日本を訪れる。知人で元ヤクザの田中健(高倉健)と再会、奪還の手助けを頼む。健にはハリーを拒めない恩義があった。奪還に成功したものの、ハリーと健は東野、タナーとの抗争に巻き込まれてしまう。
40代で脂ののっている健さんがとにかく若くかっこいい。共演する元祖国際派女優、岸恵子も美しい。ただ公開当時は実録ヤクザ映画に移行した時期。劇中でも「仁義なき戦い」の看板が見える。健さんにとってこの作品は一つのターニングポイントであったのだろう。この作品の後、健さんは東映専属から他の映画会社の作品にも出演、役域を広げていく。
この作品は形を変えたバディー物。のちに健さんが出演した「ブラック・レイン」との共通点も多い。ただノリはハリウッドライクというより、シュレーダー印でシリアス。高校の頃、懐かし映画としてテレビで見たこの作品は、タラップで深々とお辞儀するミッチャムと、それに意を返す健さんだけが印象に残っていた。ただ改めて通して観て、人間関係の伏線も含め、ハリーが健さんに返す義理、恩義の意味はとても深いと感じさせる。もちろん本作のミッチャムも名演である。
この作品、内外の評価は決して低くない隠れた名作。米アマゾンやIMDbのコメントも愛情に溢れている。また日本映画専門チャンネルで再放送されると思うので、この機会に是非観て欲しい。
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