「ナイトクローラー」を観る
先週に続き今夜も盟友N氏と映画へ、「ナイトクローラー」を観てきた。犯罪都市ロサンゼルスを舞台にパパラッチをジェイク・ギレンホールが病的に熱演。かつて「遠い空の向こうに」で目を輝かせ宇宙を目指した少年は、年をとり瘦せこけた顔でカメラ片手に犯罪現場に立つ。同じ演者かとその変貌ぶりに唖然とする。
コソ泥まがいの人生を生きてきたルイス。そんな彼が出くわした交通事故に間も無く現れたテレビクルー。彼らは躊躇すること無く被害者の姿を撮る。気圧されるもまさに天職と感じたルイスは、スクープ映像を目指し邁進する。そしてその世界にのめり込み、結果を残していく。やがてある事件に出くわすのだった。
この作品を観ると、内田裕也製作・主演の「コミック雑誌なんかいらない」を思い出す。両作品共、主人公の立つマスコミにおける善悪の境界線、モラルが描かれるが、本作はあくまで反面教師的でより冷徹だ。被害者、犠牲者相手に良心など持たない。一線を引いていたプロデューサーさえ、ルイスの野心、巧みな言葉にモラルを失う。その行き着く先の恐ろしさ、目の前の出来事さえ疑いたくなる。本作のそこが興味深い。
夜のシーンが多く、より効果的だったなのは赤いダッジチャージャーだ。冒頭、トヨタコルサ(ターセルかも)から成り上がり、ルイスが選んだ車。シルエットが美しく、ルイスの攻撃的なドライビングでスクープを追う。スクープハンターたる装備も凄い。BBC「トップ・ギア」よろしくカーチェイスも迫力あり、カメラワークが素晴らしい。
主人公への感情移入は不可能だが、物語の吸引力に間違いなくその行く末を見逃せなくなる。「セッション」同様、映画館独特の雰囲気、密室感がスパイスとなって映画好きには堪らない傑作だ。
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