「セッション」を観る
今夜は盟友N氏と「セッション」を観てきた。J.K.シモンズの米アカデミー助演男優賞を含む3部門を受賞した作品。それだけでなく脚本、キャスト、音楽だけでなく全てが完璧。今日この作品観て、ここ数年に一本の傑作と感じた。原題は「WHIPLASH」というジャズの楽曲名が付けられているが、物語後半に至ってその本当の意味(原題)を知る事になる。
主人公ニーマンは有名音楽大に進み、一流のジャズドラマーを目指す学生。大学内で名を馳せたフレッチャーの下、彼の楽団に招聘された。最初はフレッチャーのスパルタぶりに翻弄されるも、やがて主ドラマーに抜擢されたニーマン。だがニューヨークで開かれるコンクールに向かう彼にとんでもない出来事が待っていた。
この作品のテーマは何?と言われると困る。音楽映画として異質で、用意された結末やサクセスストーリーはない。教訓も無ければ得るものもない。正直、青春ドラマとして甘酸っぱさは僅かで殆ど毒だらけだ。だが冷徹、徹底した主人公への仕打ちも、やがて訪れる反撃の場がとてつもない見どころになって返って来る。それは仕掛けたフレッチャーだけでなく、観客の想像を超えて襲ってくる。そして入魂のドラミングの果て、結論は観客に委ねられる。そこが非常に大人だ。
冒頭から楽器の準備、生活音さえも味方に付け、リズムを刻むのかと思うほど。その徹底ぶりに引き込まれる。だからこそ(観た人なら判る)事態が暗転する瞬間は鮮烈だった。それだけでなく劇中のジャズ、演奏曲も爽快さよりもネチっこく、演者の汗、血が伝わってくる程。とにかく音質の良さに目を見張る。できる限り音響の良い映画館での鑑賞が最適だろう。
フレッチャーを演じたJ.K.シモンズのオスカー級、徹底したヒールぶりは特筆。対する主人公を演じたマイルズ・テラーもけっして負けていない。音楽映画の命、演奏する姿、ドラミングは本物だ。その火花がラストシーンに結実する。実は本作が音楽映画に形を変えた復讐劇にも取れる。そんな作品を仕掛けた若きデミアン・チャゼル監督(兼脚本)の才能は末恐ろしい。見逃しては損、映画通なら観るべき傑作の誕生だ。
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