「トラック野郎風雲録」を読んで「トラック野郎・故郷特急便」を観る
「トラック野郎」シリーズを手掛けた鈴木則文監督自らによる「トラック野郎風雲録」を読んだ。単なるシリーズの回顧録に留まらず、任侠、実録ヤクザと進む東映、映画界の現在、過去に迫っていく。監督が亡くなって一年になるが、ほぼその直前に書かれたもので車雑誌「カミオン」で連載、これをまとめて発刊は2014年になる。
本の中で監督のフィルモグラフィーを振り返りつつ、「トラック野郎」がその集大成であると感じる。そこでこの本を読んで改めてシリーズ最終作「トラック野郎・故郷特急便(ふるさととっきゅうびん)」を観る事にした。
冒頭「トラック野郎10本記念映画」と題されるように、公開の時点で最終作となる予定は無かったそうだ。続編のシナリオもしたためており、(興行での下火を感じつつ)監督はそんな気で撮っていなかった。ただ実際に本作を観てみると何となしに最終作的な憂いを感じるのだ。
運送の最中で出逢った歌手と自殺未遂のジョナサンを助けた女性、ダブルマドンナと(いつも通り)勝手に恋に落ちる桃次郎。四国を中心に桃次郎が奔走するロードムービー。なお何度かテレビでの放送を観ていたせいか、石川さゆりの歌う劇中歌「傷だらけの恋」を覚えていた。
シリーズに共通する手垢のついていない”ヒロイン”。本作では当時、映画初出演の石川さゆりに森下愛子の初々しさ。「南国土佐を後にして」を接点に二人のヒロインが揃い、「トラック野郎」的な浪花節に触れる。シリーズ皆勤の由利徹や南利明も健在。このシリーズにはホワイトカラーの存在など皆無。クリスマスステージから桂浜まで殴りあうアツさ、人情と哀愁、相変わらず勘違いな桃次郎が可笑しい。そして成就しつつある恋を捨てて爆走。いつも以上に泥まみれな一番星号に見える。今回の「一番星ブルース」はいつも以上に心に沁みる。
活動屋鈴木則文監督の集大成、そして東映最後のプログラムピクチャーとなった「トラック野郎」。「トラック野郎風雲録」の中でも全国の上映会に奔走する監督、ファンとの出会いが描かれている。ファンにとって「トラック野郎」は特別なんだ。いつまでも色褪せない、シリーズの中に40年経った今でも愛される理由がある。その道程を知る意味でも「トラック野郎風雲録」は副読本として興味深い。
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