「君よ憤怒の河を渉れ」を観る
年始、BS日テレで録ってあった「君よ憤怒(ふんぬ)の河を渉れ」を観た。高倉健主演、佐藤純彌監督、「新幹線大爆破」のコンビ再結集による作品。和製ハードボイルド、70年代当時流行った西村寿行原作の一つ。かつて中国で上映され、一大ブームを生んだという。チャン・イーモウ監督がこの作品の健さんに惹かれ、主演に迎えた「単騎、千里を走る。」を撮っている。
物語は突然事件に巻き込まれた検事杜丘の逃走劇であり、逃走過程で現れる事件の真相が描かれる。さらにアクションにラブロマンスとてんこ盛り。151分の長尺で、もし劇場で観たのなら相当の体力を強いられる気がする。とにかく脚本も展開も相当に無理がある。脚本を吟味するという健さんだが、この作品は恩と義理で撮った感は否めない。
そんな作品でも見どころはある。まずは冒頭に流れる主題曲だろう。どうやら健さん本人によるスキャットらしいのだが、これが味があって耳に残る。あまりのインパクトについこの曲を口ずさんでしまう自分がいる。この曲だけでも欲しい。もう一つが病院隔離でのシーン。見ようによってはまるでコント、健さんだから成立する。精神操作された際の表情、演技は他の作品で見た事のない健さんがいる。
逃亡者、判官贔屓、この作品が中国でウケた理由は解る気がする。この作品の健さんはとにかくスーパーだ。熊との戦いに勝ち、未経験のセスナ操縦をこなして日本を縦断し、馬に乗って街中を逃走する。孤高のヒーローである健さんを憧れに感じたのだろう。個人的には原田芳雄、大滝秀治、下川辰平ら名バイプレイヤーの登場に当時の日本の社会が映り、作品と別のところで興味深かった。
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