「エリジウム」を観る
WOWOWで録ってあった「エリジウム」を観た。「第9地区」のニール・ブロムカンプ監督によるマット・デイモン、ジョディ・フォスターを主演に据えた近未来SF作。22世紀、貧富の差は大きく、地球に住む貧民と”エリジウム"と呼ばれる宇宙コロニーに住む市民に分かれていた。不慮の事故で余命5日となったマックスはある仕事の代償に、自動治癒装置のあるエリジウムを目指す...
前作「第9地区」を観ればニール・ブロムカンプの作風は知れよう。ささやかな希望とその先にある現実。やはりハッピーエンドは期待できない。南ア出身のブロムカンプの持つ未来観は一貫しており、多民族化したチャンポン感に溢れている。そして今回はスラム化したロサンゼルスが舞台。幼少期、貧困からの脱出を志すマックスとフラウが大人となり再会。お互いに突きつけられた現実に二人の運命の歯車は、再会をきっかけに大きく動き出す。
そんな貧困の対極にある理想郷がエリジウム。全てが白で統一され、システムにより管理された世界。ただここでの権力争いはストーリーを動かすプロットの一つであり、大半は地上で話は進んでいく。そこに現れるのがクルーガー。演じるは「第9地区」の悲しき主人公シャールト・コプリーだ。今回は狡猾で獰猛、クライアントの裏をかくエージェント。まるで色の違う役柄だが、結構強烈な印象のシーンもあり、この作品で最も目立っていた。
ブロムカンプの未来風刺も面白い。管理は進み、あまりの貧困と苦痛にロボットにさえ愚痴をこぼす。現在の世界に流れる不況の影も、進んでいけば同じ道を進みそうな現実感。南アで育ったブロムカンプらしい視点だと思う。希望を達したマックスの目前に広がる姿は何を見たのだろうか。「第9地区」の”花"のように何かを暗示している気がする。
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