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2013/02/28

第85回アカデミー賞授賞式を観る

130228

 毎年二月の恒例行事、米アカデミー賞授賞式を観た。今年の司会はセス・マクファーレン。現在公開中の「テッド」は彼のセルフプロデュース(製作、監督、声の出演他)によるもの。その多才ぶりもさることながら、これがディカプリオ風の中々の色男。さすが「アメリカ!」と層の厚さを感じる反面、まさに「テッド」を地でいくお下品パフォーマンスで始まるあたり、彼の個性は侮れない。いや、そのパフォーマンスを認めるあたり、米アカデミー賞の土俵の広さ、度量の深さを改めて感じる。

 観るたびに思うが、ここには単なる授賞式に留まらないショービジネスの頂点の姿がある。候補者を壇上に上げ、付け焼刃なインタビューに終始する何処か名ばかりのアカデミー賞とは違う。長き歴史が生む受賞感動の間を圧巻のパフォーマンスの数々で紡ぐ。アカデミー賞授賞式は興奮、涙、そして笑いと全てが詰まった第一級のエンターテイメント。しかし授賞式という枠ながら、毎年受ける感動も違う。その根底にはその一年間に作られた全ての映画の存在があるからだ。作品賞受賞の「アルゴ」ベン・アフレックのスピーチにも言及されていた。

 主要部門の中でも目立ったのは主演女優賞のジェニファー・ローレンス、脚本賞のクエンティン・タランティーノの二人。ジェニファーの超新星、まだまだ光りそうな原石ぶりに期待、ルックスもパフォーマンスも初々しかった。タランティーノのサービス精神は相変わらず、まくし立てるコメントに機微を忘れない。ちなみにプレゼンターのシャーリーズ・セロンはご近所との事(笑)。主演賞のダニエル・デイ=ルイスのメリル・ストリープをおちょくったコメントも可笑しかったし、2度目の受賞となった助演賞クリストフ・ヴァルツのタランティーノばりのコメントも捨て難い。アジア出身、アン・リーの監督賞でのボーダレスな発言も印象に残る。

 ただ今年の主役はやはりベン・アフレックだ。当時脚本賞受賞「グッド・ウィル・ハンティング」で出演僅かながらイイ奴を演じた光った逸材。「15年前、何もわからず立った」同じ舞台に再び立ち、まさに映画に育てられた(ひげを蓄え)大きな姿をみせた。古き良きを醸しつつ、何処かドライな後味を残す作風は、個人的にイーストウッドの後継と思しき存在である。時勢を受けた面もあるが、前作「ザ・タウン」の出来をみれば、まだ観ずとも今回の「アルゴ」作品賞受賞に異論はない。

 今回は007映画50周年とのコラボレーションがあり、これまでを振り返る映像の数々に、締めはシャーリー・バッシーの「ゴールドフィンガー」のパフォーマンス。スタンディングオベーションは当然、観ていてこちらも鳥肌が立った。「skyfall」で歌曲賞受賞アデルのパフォーマンスが見劣りしてしまう程、差は歴然。さすが3曲のボンド・テーマを歌ってきた実績は伊達じゃない。


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