WOWOWでSPACE BATTLESHIP ヤマトを観る(ネタバレあり)
昨日WOWOW放送のSPACE BATTLESHIP ヤマトを録画してあったので観た。アニメやマンガの実写化は「デビルマン」で懲りたはずなのに理由は単純。40才以上の健康な男子なら、必ずヤマトDNAがあるはず。普段は愛国心に興味が無くとも、ヤマトの中でなら語れるのだ。物語の熱さ、ディティール、人間ドラマと第一期アニメブームのど真ん中に居た者にとって、けっして避けて通る事はできない。今回の実写化ではご存知の原作エピソードを大胆な解釈で再構築。斬り込んでいくのにネタバレ必至なので、その点はあしからず。
キムタクの個性があまりに強く、古代進とならなかったのは想定の範囲。イスカンダル星とガミラス星が双子、それを逆手にとってそれぞれが善悪の無形生命体としたのもあり。それにより最大のヒールであるデスラーは青塗りの堤真一では無かった(実写化決定、キャスト発表の際はそうなると思っていた)。正直、このキャラ設定をバカ正直にやってしまっては終始失笑で話にならなかっただろう。デスラーの声は驚きの定番伊武さん、それならばヤマトファンならテンションは上がる。やはりデスラーは伊武さんでなくては困る。これはある意味、英断と言っていい。
だがそれ以外は残念な点ばかりに目がいってしまった。原作宇宙戦艦ヤマトはSFモノの皮を被っていたものの、基本的に大和魂に溢れていた。あくまで愛を語れるのは松本零士の作った美しいビジュアル、宮川泰のロマンあるシンフォニーがあってこそだからだ。やはりヤマトの乗組員は全て日本人でなければならないし(それは踏襲されたが)、極力女性乗組員は控えて欲しかった。正直、とってつけた正義感、チャらい描写も少なくない。まぁ時代錯誤な面もあるから、それも目を瞑ろう。
でも許せない事はある。例えば海外配給を意識してか、本作のビジュアルは英語表記ばかりが目立つ。レコードジャケットならともかく、ヤマトにアルファベットは不要だ。エヴァ並みに美しい日本語、文字を意識、追求してもいいはず。さらにガミラス艦は無形生命体に合わせたのか、同じ山崎監督の「ジュブナイル」「リターナー」の時のデザインと大差ない。艦船ファンである松本零士の無骨ながらSFテイストで個性あるデザインはそこに無い。ガミラス星人のデザインも無形生命体を意識し過ぎている。原作での地球人対ガミラス星人という人間ドラマが出ない一因となった。
原作ファンが思う本作最大の失敗は、観客の受けるスケール感かもしれない。全てが原作に負けている。リアルに狭い第一艦橋、発進ハッチ、艦隊戦、見た目だけは板野サーカスのブラックタイガー戦、画面に広がる宇宙、人間ドラマの質、戦士たちの汗臭さ...さらにあれだけの戦艦の働きを想像で補うには乗組員は少なすぎるし。それが実写作品のデメリットである。作画レベルは決して高くなかったが、当時想像力以上のものを原作アニメは提供してくれた。例えば最近なら実物大ガンダムが動かずとも観客を魅了したのは、目の前にある現実感だけの力ではあるまい。
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