「インセプション」を観る
遅ればせながらやっとのお盆休み。夏休みといえばやっぱ映画でしょ、という事で「インセプション」を観てきた。世間ではディカプリオの、または渡辺謙の...と付くところだろうが、やっぱりクリストファー・ノーラン監督の「インセプション」である。その作品と世界観はひと筋縄ではいかない。上映時間中、我が脳ミソはフル回転しまくり、148分の上映時間はアッと言う間の出来事に感じられる。けっしてCMや予告編にある圧倒的なビジュアルに留まらない深さがこの作品にはある。
「インセプション」は一見あの大ヒット作「マトリックス」をダブらせるが、同じSFでももっとパーソナルな設定だ。誰しもが接する夢を題材とし、いくつかのルールを加える事によって物語は新しさに溢れている。最終的に「マトリックス」はシリーズを通してオタ路線、子供っぽさ、アニメを具体化、実写化した程度に留まったが、こちらは大人の鑑賞に堪え得る、いやそれ以上の感慨を残す。主人公達は物語上ある目的達成を迫られるが、それよりもディカプリオ演じるコブの(心の)ケジメがテーマなのだと思う。
そんな世界観を支えるハンス・ジマーの音楽が素晴らしい。自らの個性を押し殺した新生「バットマン」シリーズとは異なり、荘厳でかつ大胆。本作を観た後、サントラが欲しくなった。再度エンドロールで流れるエディット・ピアフの歌も粋な演出だ。チームを構成する絶妙なキャスティングも見逃せない。僅かなシーンながらそれぞれ個性を残す。個人的には脇役で「プラトーン」等のトム・ベレンジャーの起用(随分年を取ったようだが)は嬉しかった。
また映画ファンなら世界を駆け巡るロケーションも興味深い。僕の目で観れば夢版007である。特に後半における雪山を舞台にしたアクション、美術はかつて観た007シリーズが重なる。そもそもチームを組んで作戦に取り組むところは「スパイ大作戦」といった感じ。そんなアクションも夢の中なら際限なくど派手とくる。これに前述の〝圧倒的なビジュアル〝が加われば天下無敵。本当はネタバレする位書きたい事は山ほどあるが、是非その目で確かめて欲しい。今年一番出色の出来、最強のサマームービーだ。
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