「告白」を観る
国内外の大作、サマームービーシーズンの最中、あえて邦画「告白」を観に行ってきた(七年前のあの時からもう何があろうと「踊る」つもりは毛頭ない)。本作の中島哲也監督といえば傑作「下妻物語」がまず頭に浮かぶ。劇場二作目の「嫌われ松子の一生」もまずまずだったが、「下妻..」ほどのカタルシスは得られなかった。だが今回の「告白」はシンプルなテーマながら幾重にも重なる伏線、中島監督らしい印象的なスローモーションを多用した映像、そして心をえぐるような展開に最後まで目が離せなかった。
まずこの作品の興味深さは単なるミステリーというジャンルに囚われないところだろう。文字通り様々な告白の果て、やがて一つの目的に向かって物語は収束していく。倒叙的なアプローチもあくまで作り手の掌の上の出来事。観客は作者、監督、演者達に翻弄させられる。ただその根底にはテーマの一つに命を挙げている事、それが観る者にボディーブローのように効いてくる。冒頭、劇中の軽い中学生達に辟易するも、そんな彼らでさえその連帯感は「命」を代償とすれば儚く脆い。
しかし本作をベタ褒めする程の爽快感は全くない。最後まで観ている気持ちの中では不快が上回っていたかもしれない。テーマや切り口は違えど、Dフィンチャーの「セブン」の後味に似た印象もある。だがそれでも本作は観る者を惹きつける力がある。あくまで根幹はパーソナル、ミステリーの皮を被った実写版「エヴァ」の側面も持っている気がする。確かに物語的には一応の決着をつけるが、個人的には目の前の小さな命を守っていく上で大きな投げ掛けを感じてならない。
なおこの作品の楽しみ。キャストでは松たか子、木村佳乃らは言うまでもなく圧倒的な存在感が光る。先物買い的な注目ならば、B組の子供たちを観るのも面白い。だが今年注目の子役、ドラマ「Mother」のつぐみこと芦田愛菜ちゃんも重要な役回りの一人で登場している。でも最も大きな見どころは、映像を含めた中島監督の達者なストーリーテリングぶり。それにしても一つ惜しまれるのは最も観て欲しい層に対し、R-15指定が掛かった事は残念だ。
| 固定リンク
コメント