「第9地区」を観る
今夜は盟友N氏の誘いから、SF大作「第9地区」を観てきた。大作とはいえ有名俳優は一切出ず、しかも監督も無名の新人。だが制作は「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンというところがミソだ。奇抜な物語をレベルの高いビジュアルでサポート。ドキュメンタリー風でリアリティのある映像にマッチする。もちろん宇宙人ものゆえの荒唐無稽さも兼ね備えるが、自分としては十分に許容範囲だった。
物語はユーモアを交えながら、そして中盤からグイグイと力強く展開。個人的には冒頭のテンポの良さは時についていくのに苦労したが、エイリアンとの接触から20年経過というプロットが無駄な説明を排除。宙に浮かぶ母船、爬虫類系エイリアン等定番のプロットも登場するが、〝20年経過〝という設定こそがSF好きの想像力を掻き立ててくれる。そこに生まれる見えない関係、物語の進行はオリジナリティーに溢れているからだ。
南アフリカヨハネスブルグというロケーション、そこに降り立つエイリアン。人種の多重構造が生む独特の世界観は、その場所こそがかつて経験してきた歴史をも重ねる。南アフリカ生まれの監督共々、彼らの目、体験が活かされているのではないか。またSFの体裁を採りながら「人間の敵は人間!」は諸悪の根幹に触れている。一見脇役のエイリアン達も感情移入の対象になるのも見事。
もちろん主人公ヴィカスを演じるシャルト・コプリーの達者ぶりも魅力。役者経験はあるものの、この作品では制作で携わる予定だったところを主役に大抜擢。自らの運命を巡る悲哀を見事に演じている。シリアスとユーモアがやがて家族や愛をテーマだった事を知る。SFらしい後半にかけてのアクションも見どころ。確かにグロい描写もありPG-12は納得するが、SF好きの方になら是非お薦めしたい、そんな佳作である。
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