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2009/06/29

「マイケル・ジャクソン」という時代

 中学時代、レコード店の片隅で、あるレーザーディスクのデモが流れていた事を思い出す。見るもの全てが新鮮で、一時間のビデオを何度も何度も立ち見した。流れていた映像は、マイケル・ジャクソンの「スリラー」だった。当時、アメリカではMTVが始まった頃。そこで驚かされたのは「ビリー・ジーン」のライブアクト。誰が名付けたかムーンウォーク。猫も杓子も、出来ようが出来まいが、足を後に引きずって真似をした。

 ちょうど身近なところでは、レコードレンタルの登場と重なる。思春期、音楽の興味は邦楽から洋楽へ変わった頃でもある。もちろん借りたレコードにも「スリラー」はあった。また借りるばかりでなく、シングルの「スリラー」も買った。ただのシングルではなく、12インチシングル。30センチのLPサイズをEPの45回転で走らせる。当時ダンス系とくれば、全て12インチシングルでリリースされていた。

 90年代、CDが爆発的に普及した頃、マイケルはクインシー・ジョーンズと共同プロデュースによる集大成「BAD」をリリース。当時、CDは3,200円だった。プロモ公開も一大行事。第一弾プロモの監督は、前作のジョン・ランディスからマーティン・スコセッシ。ニューヨークの地下鉄を貸し切っての撮影。マイケルのダンスもさることながら、まだ無名だったウェズリー・スナイプスが印象的だった。今観てもクオリティの高い一篇である。

 社会人になって嗜好の違いから、マイケルの音楽と疎遠になった。この間、漏れ聞こえてくるのはゴシップばかり。そしてレコード、レーザーディスクは世の中から消え、今や音楽はCDから楽曲のダウンロード販売に移り変わろうとしている。先週末のニュースもそんな中の出来事だった。その時、年下の妻にこんな事を言われた。

「マイケル・ジャクソンって黒人なんだって!」

時は流れ、一つの時代は終わった。


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2009/06/15

「超合金の男 -村上克司伝-」を読む

 アニメや特撮番組制作者と玩具メーカーの関係は切っても切れない。富野由愁季氏が、作品製作における両者の軋轢を吐露していたが、それを知って以来、何処かしら、玩具メーカーに対して偏見を持っていた。実際そのように世に出た玩具は少なくなく、現在一人歩きしたガンダムシリーズ等例に漏れず、そこには玩具メーカーの圧力が見えてくる。しかし両者の関係に軋轢でなく、むしろクリエイティブな相乗効果を生み、エポックメイキングな玩具を提供してきた時代もあった。その中心に居たのが、本著の主人公、村上克司氏である。

 バンダイの人気玩具の代名詞、超合金。常に革新的なアプローチの影に村上氏があった。デザインの裏には子供を喜ばせる仕掛け、テレビ画面と玩具を結びつける驚きに溢れている。デザイン重視となれば、変形や遊びに目を瞑るところ。彼にそんな考えは無く、デザイン上成立している事は手元の玩具で実現させる。そんなコンセプトに基づき、番組の企画段階から参画。ただスタッフロールに乗る事も無く、知る人ぞ知る存在であった。「勇者ライディーン」「超電磁ロボコンバトラーV」「ゴールドライタン」「六神合体ゴッドマーズ」等合体、変形、コンビネーション、どれもが革新的な遊びを提供してきた。

 それだけでなくその手腕、デザイナーとしての目線が素晴らしい。特に「宇宙刑事ギャバン」のコンセプトイメージは、当時衰退期にあった東映特撮ヒーローの息をふき返らせる。メタリックヒーロー、デザイン、演出と斬新な作品開拓に一役買った。その渦中での村上氏の言葉、「俺がギャバンだ!」には唸らされる。この本では、同様にそれぞれの作品とエピソードで繋ぎ、村上氏の姿に迫っている。それだけでなく、玩具、アニメ、特撮好きにはたまらないエピソードでいっぱいだ。

 冒頭、玩具メーカーに対する偏見を述べたが、本書でそれを一蹴する熱意と常にクリエイティブである村上氏に圧倒された。もっとも今もマーチャンダイジングありきの戦略は絶えない。しかしその玩具に子供たちの姿が見えた時、村上氏、あるいは村上イズムの継承者たちによるものなのだろう。玩具は遊びを追求する、あるいは遊びを提供するものでなければならないのだ。幼少期、「勇者ライディーン」の超合金を手にした日の事は忘れない...彼の玩具、超合金に育てられた子供たちに捧げられた本である。


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2009/06/12

「スター・トレック」を観る

 今夜は盟友N氏に誘われ、「スター・トレック」を観てきた。最初は明日から始まる「ターミネーター4」とどちらかと天秤に掛けられていたが、迷わず「スター・トレック」を選んだ次第。理由は「T4」には大きな不安がある事(監督とか、監督とか、監督とか。結局、監督の事じゃん!)。それよりも活き若返る「スター・トレック」に興味があったからだ。そこにはシリーズ史上、最も熱い「スター・トレック」が展開されていた。ホント、とにかく熱いのだ。

 ヒットメーカー、J・J・エイブラムスの再構築した本作は、まさに「スター・トレック」ビギンズである。感情をむき出しにする若き指揮官候補カーク。対照的、冷静に物事を判断、遂行するスポック。この二者の対比、のちに友情を交わす二人の若き日の姿。カークの熱さが、そんな"若き"スポックをも動かす。そこが"ビギンズ"と呼びたくなる所以だ。圧倒的VFXも凄いが、何よりもこの熱さには代え難い。冒頭から観客を物語に引き込む動因となっている。

 それと同時にオリジナルシリーズのファンを取り込む仕掛けも嬉しい。おなじみの面々が若返って登場する点にも興味はあるが、中盤「こう来たか!」と驚かされる展開が用意されている。なお"若き"スポックを演じるのは、テレビ「HEROES」のサイラー役、ザカリー・クイント。元々キャラが濃い彼(「HEROES」ではヒゲも濃かったが)が、誰もが知るこのキャラクターを、全く違和感なく演じている。その姿、レナード・ニモイに劣らず。彼なら、オリジナルシリーズのファンも納得するのではないか。

 物心ついた頃に観たテレビ「スター・トレック」は、パッチパチのコスチュームのウイリアム・シャトナーが指揮官席に座り、ゆるーい展開で進む宇宙冒険ドラマだった。矢島正明さんが声を充てたカークは今も耳に残る。対してクリス・パインの演じるカークは、それを叩き壊すかのような熱さ、それが魅力的なのである。公開前、その出来から続編始動の噂は出ていたが、これなら現実味を帯び、是非観てみたいと思わせる。本作は夏向き大画面向き、劇場で観て欲しい作品である。

P.S.
 終演、オリジナルテレビシリーズのテーマがフィーチャーされ、ファンの心をくすぐる。ただできれば、願わくば、御大ジェリー・ゴールドスミスの手掛けた劇場版テーマも、そこに絡めてくれれば100点満点だったのになぁ...と思うのは贅沢かもね。

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2009/06/07

名馬の条件

 安田記念のウオッカは圧巻だった。抜群の手応えで向かった府中の直線。だが目の前は壁ができ、判断を迫られる鞍上武豊。そして行き場を失い首を上げるウオッカ。万事休すと思われた瞬間、僅かな間隙をぬって伸びてきた。結果、2着のディープスカイに3/4馬身差をつけて優勝。安田記念連覇に初の10億円牝馬誕生の瞬間でもあった。さすがはダービー馬、天皇賞を勝った馬は伊達じゃない。

 それから遡る事14年前、同じ府中の直線、全く同じように進路を絶たれた馬がいた。それが二才時(当時呼称三才)のエアグルーヴ。オープン戦のいちょうステークスで、致命的ともいえる不利を受けたものの、きっちり1馬身差をつけ勝った。のちにオークス、二千メートル戦となった秋の天皇賞を牝馬で初めて制する事となる。奇しくも手綱をとったのは武豊。少々の不利では負けない、それが女傑の条件なのかもしれない。

 致命的な不利で思い出されるのが、2000年の有馬記念。年内古馬長距離GI(及び出走重賞)完全制覇のかかったテイエムオペラオー。直線の短い中山で進路を阻まれ、悲鳴に近い絶叫の中、壁をこじ開け、着差こそ僅かハナ差だったが、永遠のライバル、メイショウドトウを退けて勝っている。着差やタイムではなく、勝ち続ける事もトップホースに要求された条件なのだ。

 その点、今回の安田記念、ウオッカの2着に敗れたディープスカイは少々だらしない。昨秋の天皇賞以降勝ち星から遠ざかり、春シーズン叩き2戦目に打倒ウオッカを目指したものの、敗戦に陣営はあくまで目標は宝塚と一言。だが正直、安田でのパフォーマンス、走破タイムも平凡。宝塚記念の出走馬はまだ決まっていないが、天皇賞組、その他の重賞組等、けっして侮れないメンバーだ。果たしてディープスカイは「目標は宝塚」を結実できるのだろうか。

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