「007/慰めの報酬」を観る
今夜は沼津のジェフリー・ライトこと盟友N氏と「007/慰めの報酬」を観てきた。本作は前作「カジノ・ロワイヤル」の明確な続編で、何の説明も無くスタートするので注意が必要だ。本作だけの一見さんはお断り、前作の"復讐"ならぬ"復習"は絶対に必要となる。もちろんクラシック・ボンドへのオマージュも散りばめられている。ただ本作はジェイソン・ボンドの復讐劇ととるか、いやこれはボンドの卒業旅行と考えるべきかもしれない。前作の向う見ずな諜報員から、確かに成長を感じ取る事ができる。
しかし前半は連続するアクションに、物語を追い掛けるのが精一杯。個人的に本作のアクションの魅せ方がいただけないのだ。例えばアクションのモブシーンのラップ。画的な面白さで奇をてらった印象だけ。また冒頭のカーチェイスも大画面を生かした感じがせず、衝撃と轟音のうちに終わっていく。アクションシーン全般、撮影と編集が噛み合っていないと言ったらいいのか。また盟友N氏は「何処かで観た事がある」と言っていたが、やはり「ボーン」シリーズを意識し過ぎたのか。前作「カジノ・ロワイヤル」のストレートなアクションシーンが素晴らしかっただけに残念である。
さらに前半における心理描写が足らないため、ボンドの想いが観客に届くのに時間を要する。本作だけでは感情移入がし難い。前作を観た上で...としたのだろうが、ボンドは宿敵を追い詰めるのに必死。しかし本当はその動機の中で得たものがこの作品のテーマ。本作のボンドガール、カミーユを鏡としたボンドの成長、そして"卒業"を感じさせるラストシーンがいい形なだけに、とても勿体無い気がする。本作はアクションだけでなく物語的にも、前作が上げたハードルに苦しまされる事になった。
だが本当の問題は次作以降の展開だろう(本来は本作がそうなるべきだったかも)。本作の後、ウォッカ・マティーニをたしなむ粋なボンドへと繋がるはずなのだが、それでは単にクラシック・ボンドへと回帰するだけ。果たしてアルバート・ブロッコリの子孫達の目指すボンドは、そして今や新ボンドシリーズのブレーンたる、ポール・ハギスはどんな物語を用意するか。James Bond will return、ジェームズ・ボンドは(スクリーンへ)戻ってくる...
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