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2007/12/01

「パンズ・ラビリンス」を観る

 一日は映画の日だったので、ギレルモ・デル・トロの「パンズ・ラビリンス」を観てきた。上映館の関係でいつものシネコンではなく、場末の映画館での鑑賞。デル・トロというとアメコミ原作の「ヘルボーイ」が思い出されるが、今回は1944年が舞台のファンタジー、全編スペイン語という異色の作品となった。しかし導入部はファンタジーながら、時代背景を追ったスペイン内戦時を描いた作品と思い知らされる。主人公は少女ながら、そこに残虐なシーンが少なくなく、明らかに子供向きな作品ではない。そんな大人のためのファンタジーだった。

 仕立て屋の父を失った主人公が、母親の連れ子として、スペイン軍大尉と生活する所から物語は始まる。しかしその義父は私欲のため、残虐な行為を繰り返す。しかも母は義父の子を身ごもり、その代償として生活を得ていた。そんな中、自らをパンと呼ぶ怪物が現れ、本当の住むべき世界への帰還と、ある三つの試練を与えるのだった。物語だけをなぞっていけば、パンと主人公の交流するファンタジーに終わる。だが、そこにもう一本の現実をぶつける事で、この作品は全く異なる味わいを観る者に与える。

 そう強く感じるのは、ファンタジーの部分、スペイン内乱の部分、どちらか一方でも充分に物語が成立するところにある。どちらも添え物でなく、それぞれを引き立たせる。終わってみると、現実と虚構、どちら側からも物語を見つめる事ができるのに気づく。例えばファンタジーとして観れば、主人公の見た不思議世界が、その少女の言動を見た大佐や大人の立場からは虚構がある。ただ両者を結びつけるのは戦争、生と死の現実だ。

 ハッピーエンドとアンハッピーエンドの狭間を感じるのは、「マッチ売りの少女」に相通じる。何が幸せで不幸なのか。だがそんな童話よりも、この作品で描く戦争の生む現実は単純ではない。少女が感じた世界、彼女の出した結論は現実逃避ではあるが、そこに戦争の理不尽さを感じずにはいられない。だからこそのリアル描写、大人のためのダークファンタジーなのだろう。願わくば、もっと良い劇場で鑑賞したかった。

Panslabyrinth

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投稿: 日本インターネット映画大賞 | 2008/01/01 23:51

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カテゴリに入れるならホラー、しかしホラーでない? ダーク・ファンタジーと銘打たれた「パンズ・ラビリンス」作品概要については公式及びwikiを参照してください。多くの賞を取ってい... [続きを読む]

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