「大奥」と「マリー・アントワネット」を観る
久しぶりにDVDレンタルした。DVDはコレクションするものが信条だったが、結婚した今は緊縮財政のため、ほとんど買っていない(唯一買ったのがBru-Rayの「007カジノロワイヤル」)。またWOWOWのHD放送を観られる点も大きい。映画は再び、録るコレクションに移行しつつある。観たい作品が妻がセレクト、「大奥」「マリー・アントワネット」を借りる事になった。両作共、7泊8日のシールが貼ってあったが、「マリー・アントワネット」は新作シールを見逃し、少々高いレンタル代である。
「大奥」は大奥史上最大のスキャンダルとされる、絵島生島事件を描いたもの。ドラマを立ち上げたフジとしてはテーマだけは『最も面白い題材を映画にしました』と言いたげな映画化。妻曰くテレビシリーズのキャストをローテーション、そこへ外様の仲間由紀恵、井川遥をキャスティングしている。もちろんドラマで人気だった大奥スリーアミーゴスを配している。しかし映画らしいスケールを求めるとバカをみる。映画ではあるが、これは明らかにテレビ映画だった。
まずこの作品、大画面で観たいとは思わせてくれない。どこをとっても太秦映画村。ただこれは今作る時代劇ゆえ、やむを得ないところはある。しかし物語のスケール、キャストの演技はテレビ映画止まり。映画らしいスケール感を終始感じる事ができなかった。そもそも劇場で観る時代劇に愛憎人事ドロドロ劇は似合わない。正直、テレビで充分、いや地上波で放送された時にでも...というのがいいところの作品だった。
一方「マリー・アントワネット」は同じ時代劇、愛憎人事ドロドロ劇ながら、ちょっと趣向が違う。オーストリアから政略結婚としてフランス、ルイ16世の下に嫁ぎ、のちに王位を継承した夫とは別に自由に生きた彼女の人生、そして末路を描いている。スケール感は圧倒的にこちらのほうが上。実際の宮殿でのロケ、煌びやかな衣装とテレビでは表現しきれないディテールを感じる。下手な演出よりもそうした画から溢れる、物語の背景は素晴らしい。
しかし如何せん観客に要求する主人公への感情移入が足らない。王位継承者を生む事が義務付けられる苦悩、しかしそこから解き放たれた姿は、知られているマリー・アントワネットそのもの。中身も見聞した歴史以上ではなくそこまで。むしろ呆気ない。またフランスを描く英語劇というのもいただけない。英語ゆえか、ドロドロ感も後退した気がする。しかも何故、監督が今この題材を選んだのか、最後までその意図が見えなかった。作品が二時間で終わったのが救い。
「大奥」と「マリー・アントワネット」、どちらが映画らしいかと言われれば後者。ただ最終的には約二時間という制約の中で観る者の面白い、興味深い作品になり得るものこそが映画の醍醐味といえる。その点でこの二つの作品はボクにとって物足らなかった。映画館で観ても感想は変わらないだろう。
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