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2007/05/13

「バベル」を観る

 今日は一人になる時間ができたので、噂の「バベル」を観てきた。菊池凛子のオスカー助演賞ノミネートに加え、上映中の激しいフラッシュバックが問題となり、日本公開で話題になっている本作。日本的には役所広司が、ハリウッドからはブラピとケイト・ブランシェットの名が目立つが、前述の菊池凛子ら沢山の登場人物たちが、物語のピースを担った群像劇に仕上がっている。

 ただ本作は物語に気持の良さを求める作品ではない。むしろ観る者の不安感を誘う。登場人物たちの不安と不条理の連鎖が、スクリーンを通して現実を突きつけてくる。形は違えど我々が生きていく中、潜んでいる不安をこの作品は浮かび上がらせるのだ。一発の銃弾に端を発した物語は、モロッコ、東京、アメリカ、メキシコの四箇所を巡り、やがて一つに紡がれていく。その一つ一つに家族に対する愛情と不安が満ち溢れており、ドライに描かれていた物語が最後には温かいものに変わっていた。それぞれの親子、夫婦、そして家族の物語。

 だからといって同じ群像劇、「クラッシュ」のようなハリウッド的なハッピーエンドは皆無。それこそがアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ作品のテイストなのだろう。例えば菊池演じるチエコの心の救済が行われたか否か、はっきりとエンディングからは判らない。リチャードとスーザン夫妻、子守の女性も笑顔を見せずに終えていく。言葉も肌の色も違う人々の日常、生きる中の偏見や不安と葛藤、それが『バベル』というタイトルに込められている。

 時間軸を微妙にずらしつつ、三つの物語が進行するが、「パルプフィクション」のような大胆さは無い。しかし観客はそんな物語のパズルを再構成しながら、興味深く見守っている。エンターテイメントとは別の方向性のため、一般向けの作品ではないが、映画好きなら本作に惹かれるものがあると思う。そして本作での菊池凛子の存在感は、我々日本人にとってそれを導引するものの一つ。時に鋭く、時に哀しい視線が痛い。今更ながら、もう映画の世界に国境は無いのを実感した。

Babel

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映画バベルを観た感想と評価。 [続きを読む]

受信: 2007/05/14 01:44

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2週間半放置、というか、転がしましたが、やっぱり文章にはできそうもないので、箇条書きにて失礼します。 [続きを読む]

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