「武士の一分」を観る
2007年、謹賀新年。皆様、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。早速ですが、今年一発目の映画は恒例盟友N氏と「武士の一分」を観てきた。藤沢周平原作、山田洋次監督による三作目。主役の三村は盲目の侍、演ずるはあのキムタク。キムタクというと芸達者ながら、本人の色が強く、何を演じてもキムタクになってしまう。三船敏郎や丹波哲郎のように持ち味に変わればいいのだが、これまでそんな雰囲気をキムタクに感じた事はなかった。
まず安心したのは、本作のキムタクが「キムタクじゃなくてよかった」というようなミスキャストでない点。むしろ若い侍、負い目と葛藤の中、武士の一分を通す姿がハマっていたように思う。特に妻加世役の壇れいとのやり取りは微笑ましく、また夫婦の絆と心地よさを感じ、後の行動への布石となっている。この役を単なる若手俳優が演じていたら、もっと味気ないものであったろう。山田洋次監督のキャスティングには何らか意味があるはずだ。もちろんキムタク自身が妻帯者である点も大きい。
そんな監督の意図の一つに若い層へのアピールを感じた。その導入口としてキムタクは最適だ。伝えたい古き良き夫婦の形。確かに武士の一分を通す姿、果し合いはあるものの、時代や世代を問わずに感じるテーマ。現代、夫婦の形が変わりつつある中、愛する人のためというシンプルなメッセージが込められている。作品は違うが、「硫黄島からの手紙」に相通じる点でもあった。藤沢周平の作品には必ず、時代劇の枠を超えた何かがあるような気がする。
この作品もこれまでの「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」と同様、若い二人を芸達者が支える構図。中でも気を吐くのが、徳平役の笹野高史だろう。主役のキムタクを喰うシーンも少なくない。三村、加世と三人での演技の中、時に笑い、また緊張感を提供。三人の関係が密であるからこそ、この物語は成立する。非常にシンプルな物語ながら、見応えがあるのはそういう理由だと思う。おば役の桃井かおり、同僚の赤塚真人も笑いと共に堅実な演技をみせる。ただ作品的には本作より、「たそがれ清兵衛」のバランスの良さが勝っている気がした。秀作ではあるが、残念ながら小品である点は否めない。
実は近々、縁あって籍を入れる事になっています(実は最近、更新が遅れ気味になっているのもそんな理由)。そんな時、この作品の夫婦像は理想に感じました。お互いを思う気持、大事にしたいです。そして煮物の味、忘れていませんよ。この作品のキムタクのようにね。この作品はご夫婦や恋人同士、世代を問わずオススメしたいです。
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投稿: 日本インターネット映画大賞スタッフ | 2007/01/07 16:34