「トンマッコルへようこそ」を観る(ネタバレあり)
昨夜、盟友N氏と「トンマッコルへようこそ」を観てきた。つい劇場窓口で「ドンマッコル...」と間違えてしまった。後で判った事だが、トンマッコルとは『子どものように純粋』という意味だそうだ。この作品の背景、そして雰囲気はポスターから伝わってきていたが、特に「オールド・ボーイ」のカン・ヘジョンのお惚けな表情が印象的であった。盟友N氏の観たい作品にあった事もあり、遅ればせながら良い機会と一緒に観る事となった。
冒頭からファンタジー色の強い作りの作品である。しかしそれが添え物でなく、終始一貫しているものだと終わってみてわかる。根底に流れる朝鮮戦争、朝鮮半島の南北対立。しかしその発端よりも、彼ら民族の原点に帰るような思いが込められている。かつて「JSA」が同じアプローチで作られていたが、サスペンス色の裏の出来事として織り込まれていた。今回も一つ屋根の下的に南北の人々が集い、その中の葛藤と交流がコミカルに描かれていく。しかしシリアス色は薄く、本作では笑みのこぼれるようなシーンが多い。
その所以はトンマッコルという村にある。冒頭で述べたが、この村は純粋な人々の集まり。特に子供たち、そしてカン・ヘジョン演じるヨイルの表情がいい。まるでアーミッシュのような時代錯誤な人々だが、南北兵士たちが心を開いていく気持がよくわかる。そしてチョン・ジェヨン演じる北の将校と村の長老のやり取りが興味深かった。
将校「どうしてこのように村を治めることが出来るのですか?」
長老「たくさん食べさせる事だよ」
まさに北の指導者へのアンチテーゼなひと言である。
この作品におけるアメリカは連合軍というより、侵略者として描かれている。横暴な米兵によって、長老が岩に叩きつけられる姿が痛い。ただ事の発端のスミス大尉が、間もなく村に染まっていく姿を見れば、『まずは相手を知ってこそ』ではという投げ掛けも感じられる。それは南北の立場にもつながるわけで、一つ屋根の下に住めば、一緒に飯も食べるし、クソもする。イデオロギーなんてクソ喰らえなんて、そんな気持にもなってくる。
戦争を描きながら甘々な流れは、好き嫌いが分かれると思う。しかし一貫したファンタジー色に製作サイドの志が表れているわけで、トンマッコルはそんな彼らの理想郷なのかもしれない。しかも全く血が流れない作品ではない。流れる血が少ないからこそ伝わるものもある。そしておとりとなって村を守る彼ら、爆撃に包まれる姿は何処か神々しい。ご存知聴けば判る久石譲の音楽、俳優陣の熱のこもった演技に最後まで見逃せない作品となった。
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コメント
こんにちは。
>北の指導者へのアンチテーゼ
理想だけでは食っていけないし、その理想さえも形骸化してる
状態を見れば、まさにという答えでした。
北朝鮮の人たちが観る事ができたら、なんと思うんでしょうかね。
カン・ヘジョン良かったです(^^)
投稿: カヌ | 2006/11/18 13:27
カヌさんこんにちは。
コメントありがとうございました。
>北朝鮮の人たちが観る事ができたら、なんと思うんでしょうかね。
今や将軍様...と思う人たちは僅かだと思うし、あらためて同じ民族が争い合う運命を悲しく思うかもしれませんね。
投稿: でんでん | 2006/12/03 21:11
こんばんは!いつもありがとうございます!
この笑顔ですよねぇ。
公式HPには、手を振っているのがありましたが、
この笑顔で、この重いテーマを表現しきったような感じ。
最後、爆撃のシーンは、、、複雑なシーンでしたねぇ。
投稿: 猫姫少佐現品限り | 2006/12/05 03:16
猫姫さんこんにちは。
コメントありがとうございます。
>この笑顔で、この重いテーマを表現しきったような感じ。
ファンタジー、笑顔の影に悲しみあり。それがこの作品の重みなのですね。
投稿: でんでん | 2006/12/16 09:11