「春が来れば」を観る(ネタバレあり)
今日は四月一日、エイプリルフール。去年のような気の利いた嘘でもつこうかと思ったが、あまりネタも無いので映画を観てきた。四月一日は映画の日でもあるのだ。だが映画の日を公開初日にする映画は無いと思いきや、何とチェ・ミンシク兄貴の「春が来れば」が今日からとあって、そのために朝六時半から車掃除、その後になるよう時間を合わせ、観る事ができた。
チェ・ミンシク兄貴といえば、日本では「シュリ」が初登場だったのでは、と思う。「シュリ」では命を乞わない北の工作員のリーダーを演じていた。そして最も強く印象づけたのはあの「オールド・ボーイ」の主人公オ・デスを演じた事。とにかくデニーロ・アプローチたる本編での変貌ぶりは目を見張る。途中のカッコ良さは通り越して、ぶつけようの無い悲しいラストは印象に残った作品だった。昨日はそのDVD「オールド・ボーイ」のメイキングを見ながら、明日は兄貴の映画を観ようと心に誓っていた。
そんな「春が来れば」は兄貴が望んでいた「体重の変わらない役」。あらすじを簡単にいうと、音楽を通して生徒と交流、そんな中でハンパだった中年男に心の変化が訪れるというもの。内容は劇的さに欠け、ありきたりな物語にも思える。しかし観始めるとチェ・ミンシク兄貴がいいのです。中年のやるせなさが、何処か自分の中にダブり、感情移入してしまいました。ダメさ加減を見ていて、やがて自分が元気づけられていくというか。去年「サイドウェイ」を観た時の感覚に似ているかもしれません。
冒頭、兄貴のダメさ加減はタバコの吸い方にも現れている。役所のカルチャーセンターで楽器を教えている兄貴。だが演奏中も窓辺でタバコを吸い、窓からポイ捨て。兄貴、それはいけませんよ!しかもダメさの溢れた前半はとにかくタバコを吸いまくる。状況問わず吸う姿に彼のお母さんからも叱られていた。だが心の変化の表れか、その本数も少なくなっていった。タバコではない、心のよりどころに気がついた事。意固地に離れていた彼女ヨニともう一度やり直す事である。その思いをつなげる音楽が使われ方と共にいい。浜辺でその曲と再会するところはヨニならずとも心にグッと来るだろう。
炭鉱の町が舞台となると「遠い空の向こうに」を思い出す。もちろん頑固な親父も登場。ある生徒の父を説得すべく、目の前で演奏。そこで泣けてきた。ブルーカラーのつらい面を見せられると、それだけで琴線に触れてしまう。子供たちがいい顔で演奏しているし、兄貴も雨の中で指揮。その後、ゴリ押しの描写はないが、結論はおのずと判る。この作品では意図的にこうしたゴリ押しを抑え、観客に訴える。観る人によってはあっさりとしていると考えるだろうが、ボクはそれで十分だと思った。
この作品では数多くの食が登場するが、ラーメンをすするチェ・ミンシクを見ていたら、何かお腹が減ってきた。映画を観終えて、早々にラーメンを食べに行ってました。劇中ではどうやら、インスタントラーメンをキムチ無しで食べていたようです。ただ兄貴、劇中で指摘のあったように、毎日インスタントばかりだと体を壊しますよ。ボクも学生時代、自炊の最中、毎日インスタントで一週間後、マジでぶっ倒れました。でも本当に劇中の兄貴、美味そうに食べてるんですよねぇ。
追伸.
劇中の桜を見ていたら、こちらの近場の桜が見たくなりました。ちょっと写真を撮ってみました(写真下)。よく見るとまだ九分咲きではありますが、見事なものです。明日は散り雨に見舞わせる事を考えれば、ラストチャンスだったかもしれません。冬があっても「春が来れば」、きっといい事があるさ...
本編とは関係ありません。
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コメント
初めまして。
トラックバックありがとうございました。
「春が来れば」はチェ・ミンシクの細部まで行き届いた演技が良かったです。
チェ・ミンシク出演の他の映画は観ていないのですが、ちょっと気になるところです。
投稿: ごいんきょ | 2006/04/02 08:43
「サイドウェイ」ははまったし、チェ・ミンシクの演技はいいと思うんですが、この映画は何故かはまりませんでした。
誰にも感情移入できなかったからかもしれません。
何故か最近ココログにトラックバックできないので、コメントのみ失礼します。
投稿: へー太 | 2006/04/02 09:51
ごいんきょさん、へー太さんこんにちは。
コメントありがとうございます。
ごいんきょさんへ
>「春が来れば」はチェ・ミンシクの細部まで行き届いた演技が良かったです。
韓国の名優だけに、堅実さが伺えました。ボクの作品を観たい俳優さんの一人だと思います。
へー太さんへ
>チェ・ミンシクの演技はいいと思うんですが、この映画は何故かはまりませんでした。
あっさりさがダメだったのでしょうか。観る側の視点、考えで印象は変わると思います。ボク的にはちょうど良かったみたいです(^^ゞ
投稿: でんでん | 2006/04/02 09:59
はじめまして。TB御礼!
今までにないチェ・ミンシクに期待して観に行き思った以上に良かったので嬉しかったですね。
彼の作品の中では「パイラン」が一番好きですがパイランとは全く違う印象を受けました。
先日の新聞批評に「韓国の小作品は力がある」と書かれていた通り派手ではないけれど
ピッタリハマル年齢層の人なら上質作品として受け入れられるのでは。
季節と共に変化する景色とチェ・ミンシクの顔に違和感はなく、あの穏やかさ好きです。
ラーメン美味しそうでしたね!
一人で食事をするな!の韓国では珍しいシーンでしたが良く見たらTVの中の人と
鏡に写った自分と二人でした(笑)監督偉い!って思いました。
今のところ「博士・・」に続き私の2位です。
投稿: ちー | 2006/04/02 11:32
ちーさんこんにちは。
コメントありがとうございます。
>彼の作品の中では「パイラン」が一番好きですが
ぜひ機会があったら観てみたいです。チェ・ミンシクはダサカッコいいというのでしょうか(苦笑)。ちょっと外れたカッコよさのある人ですね。そして柔和な表情が本作では印象的でした(^^ゞ
投稿: でんでん | 2006/04/02 14:19
はじめまして、TBありがとうございました。
この映画、自分は感情移入しまくりでしみじみと心に染みわたりました。DVD発売されたら絶対買います。手元に置いておきたい作品です。
これからもよろしくお願いします。
投稿: くっきーまん | 2006/04/02 21:03
くっきーまんさんこんにちは。
コメントありがとうございました。
>この映画、自分は感情移入しまくりでしみじみと心に染みわたりました。
チェ・ミンシクの演技に魅せられました。嫌な部分が出てるんですよね。その後の変化が見事だったし、観ている人の気持を後押しするようなさわやかさもある。ボクもDVD、買うと思います(^^ゞ
こちらこそこれからもよろしくお願いいたします。
投稿: でんでん | 2006/04/02 21:19
「春が来れば」ファンのコメントが見たくて
又来ました~(笑)
TBが反映されてないのは登録しなかったから?
そうですね~DVD楽しみですね。
投稿: ちー | 2006/04/03 12:55
ちーさんこんにちは。
>「春が来れば」ファンのコメントが見たくて又来ました~(笑)
いい話ですものね。これに限らず又いらっしゃいませ(^^ゞ
投稿: でんでん | 2006/04/03 22:24
ピンポーン!
私も「サイドウェイ」を思い出しました。
感情移入度は今年のNO.1です(^^)
私の上司は昔、1ヶ月ナポリタンで過ごして栄養失調になったそうです…
投稿: カヌ | 2006/04/22 23:27
カヌさんこんにちは。
コメントありがとうございました。
>感情移入度は今年のNO.1です(^^)
「こんな人生なんて...」思われそうですが、不器用な主人公ほど思いは強くなってしまいます。本作のキョヌはそういう意味でハマってしまいました(^^ゞ
投稿: でんでん | 2006/04/23 11:49