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2005/11/05

「TAKESHIS’」を観る[ボクなりの解釈]ネタバレあり

 今日からの公開の「TAKESHIS’」をさっそく観てきた。北野武監督最新作、ヴェネチアのサプライズ上映に加え、内容的にも賛否両論の本作。21世紀版の『たけしの挑戦状』といっていい。ただ正直「作品のテーマを理解した」とか言っちゃいけないんだろうなと思う。「観客を混乱させる」という意図、北野武の真意を深く裏読みしていくだけで、脳ミソを総動員して画面に観入ってしまう。また脚本に沿った作品とは異なり、映像やセリフのコラージュの皮を被せ、ビートたけし=北野武像に迫っている。そこで勝手ながらボクなりの解釈で「TAKESHIS’」を考えてみたい。

 大スターのビートたけしと金髪の北野武の存在差。芸能界、栄華を極めるビートたけし。そして平々凡々、しかも冴えない人生を送る北野武。ビートたけしにとって、北野武はもう一つの可能性であり、その逆も同じ。両者を構成する基本は同じであり、単にきっかけを持たなかった違いでしかない。物語の途中、銃器を手にした武の変貌ぶりはビートたけしそのもの。昔、たけしがコメントしていたが、いつも自分の中に振り子を持っていて、クールな北野武とバラエティのビートたけしが混在しているという。二重人格と違う、陰と陽のような立場。振り子を持つ事で自らをバランスさせている。作品冒頭で北野武は平凡で不器用な存在として描かれていくが、それこそ本人そのものなのかもしれない。

 一風変わったカットやシーンも、本作ではより想像上の世界として描かれている。ストーリー性は脱却した不条理劇。あの「プリズナーNo.6」を思い出す。気がつけば夢から覚め、その繰り返し。これは北野武の中の混迷ではないだろうか。中でも印象的なのが、本作で銃が攻撃の象徴として使われている点である。自らの力の象徴であり、一方海岸で彼を攻撃する警官はマスコミの姿が重なっているような気がする。自らの息の根を止める存在であり、そしてそうした想像を破壊する武器にも変わる。やたらお互いぶっ放すのはあくまで想像の世界だからという事か。ただ出てくる登場人物たちは撃たれてもなかなか死なないし、その点も過去の北野作品と大きく違う。

 でもこうやってああだこうだと言っている姿こそ、北野武が狙った事ではないだろうか。世間やマスコミが物議を醸す姿は良く言えば彼の罠にハマる、悪く言えばあざ笑われている気がする。だからこそ冒頭、「作品のテーマを理解した」とか言っちゃいけないんだろうなと書いた。実は公開にあたってのあるインタビュー、「二回観ても解りませんでした」と問うインタビュアーにそれなら「三回観て下さい」と言い放つたけし。これも「TAKESHIS’」の延長線上のような出来事。まるで本作はリングウィルスのような存在である。確かにキタニストにとって、本作を劇場で何度も観る事は巡礼のようなもの。でもボクはもう劇場で観ないだろうな。たぶんDVDで観るだろうから...

TAKESHIS


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コメント

こんにちは♪
TBさせていただきました。
北野作品はワケ分かりませんが、それでもいいんだろうな~と思って雰囲気だけ味わって帰ってまいりました(笑)

投稿: ミチ | 2005/11/06 16:58

こんにちわ!『カリスマ映画論』管理人の睦月です。TBとコメントありがとうございました。

舞台挨拶で北野監督は「ゴダールに比べりゃ、俺の作品は100倍位分かりやすい」なんてことも言っていました。「最近の評論家は分からない作品をそのまま『分からない』と評論しちゃうけど、その点昔の評論家は分からない映画もいかにも分かったように評論しちゃうからエライと思う」なんてことも言ってましたね。

私はプロではありませんけど、「分からない」なんて無責任な映画論は書きたくないなぁ・・と改めて思った次第です。でんでんさんもこの作品に対して真っ向勝負でしっかり考えてらっしゃる感じがとてもよいなぁと思います。

これからもよろしくお願いしますね♪

投稿: 睦月 | 2005/11/06 18:04

ミチさん、睦月さん
コメント&トラックバックありがとうございます。

ミチさんへ
>北野作品はワケ分かりませんが...

ボク的にはいまだに彼の「キッズ・リターン」が傑作だったりします。彼の映画映画した作品も観て下さいね。

睦月さんへ
>私はプロではありませんけど、「分からない」なんて無責任な映画論は書きたくないなぁ・・と

そうなんですよね。でもキタニストなりにはぐらかしたいなぁと。だから、『「作品のテーマを理解した」とか言っちゃいけないんだろうな』と書いちゃいました(^^ゞ

投稿: でんでん | 2005/11/06 18:34

でんでんさん、こんにちは。
私はこの映画、みなさんとは少し違う意味でよくわかなんいんですけど、いろいろな考えを伺うのはとてもおもしろいです。
ラーメン屋のエピソードは、オーディションも本編もとてもおかしかったです。

投稿: lunatique | 2005/11/07 00:37

lunatiqueさんこんにちは。
コメントありがとうございます。

>私はこの映画、みなさんとは少し違う意味でよくわかなんいんですけど、いろいろな考えを伺うのはとてもおもしろいです。

彼の個人的な嗜好が入ってますから、単純にキタニストでないとつらいかもしれません。とにかく個人の地が出過ぎてますから(^^ゞ

投稿: でんでん | 2005/11/07 20:55

正直、私はこの映画キライです。
北野武以外の、無名の新人がこういう映画を撮っていたら、ベネチアでスタンディング・オべレーションが起きたでしょうか?
彼が、自分のビッグネームの上に胡坐をかき、「わかんねーだろ?ま、あれこれ考えてみろよ」
といっているようにしか見えません。
記事にかかれているように、彼の「罠」だと思います。
なので、私は、「拒否」設定にしました。(TB、コメントではなく、自分の「頭」です。。。苦笑)

投稿: RIN | 2005/11/10 14:48

RIN姐さんこんにちは。
コメント&トラックバックありがとうございます。

>記事にかかれているように、彼の「罠」だと思います。

この作品は相当なキタニストやゲージツに煩い方に「何となく...」という心理を作っているような気がして。だからボクはそんな風にやっかんでみました(^^ゞ

投稿: でんでん | 2005/11/12 07:11

こんばんわ、TB、コメントありがとうございました。
よくよく考えると、結局は観に行ってしまった時点で罠にはまってしまってるのかもしれませんね(笑)。
北野監督にとってこの作品が唯一敗北するとしたら、それは無関心なのかな?

投稿: かのん | 2005/11/14 21:33

こんにちは、TBさせていただきました。

>まるで本作はリングウィルスのような存在である。

ボクもそう思いました。
マスコミ対応も含めて『TAKESHIS'』の一部なんだろうし
もしかしたらヴェネチアに行ったのもそうなのかもしれませんね。
個人的にはたけしの作品をずっと見続けてきたから
なんとなく楽しめたけど、「分からない」という意見が
やはり一般的なのかなと思いました。
ではでは。

投稿: Yin Yan | 2005/11/18 21:56

かのんさん、Yin Yanさん、
コメントありがとうございます。

かのんさんへ
>北野監督にとってこの作品が唯一敗北するとしたら、それは無関心なのかな?

鋭い指摘だと思います。ある意味、芸人殺しなひと言だと感じました(^^ゞ

Yin Yanさんへ
>個人的にはたけしの作品をずっと見続けてきたからなんとなく楽しめたけど...

北野作品の断片がいろんなところに出てきていますから。ただ軍団は一人残らず夢から消されたようですね(^^ゞ

投稿: でんでん | 2005/11/19 00:40

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