テレビ版「電車男」最終回を観る(ネタバレあり)
木曜の夜、テレビ版「電車男」が最終回を終えた。「電車男」の背景、ネットという今風の手段を用いながら、恋愛自体は古典的。「マイ・フェア・レディ」(「プリティ・ウーマン」)の世界を逆手にとって、オタク男を少しずつ変えていく。古典的なアプローチはそうした恋愛レクチャーに限らず、電車とエルメスが恋愛に賭けるピュアな気持を描いていく。嘘、言葉を伝える勇気...挙がってくる恋愛アイテムに新味は無かった。ただこれは純愛ブームの一環ゆえの事、仕方はあるまい。
特に最終回の前半は、観ているこちらが赤面しまくりな場面の連続。思い出の場所での告白タイム、さらに気持が結ばれた二人は「おとなのキス」までモザイク入りで披露する。純愛ゆえに更なる一線を越える事はないが、ただネットの住人たちの気持がひいてしまった様に、それ以上の描写は必要ないだろう。だが視聴者も羨ましいモードを超え、嫉妬モードに入ってしまっている。ただこれは本来描きたかったところでなく、あくまで最終回の通過点でしかなかった。
ずばり最終回のテーマは「卒業」。オタクとして視野の狭かった電車男が、恋愛に開眼、しかもそれを支えた者たち、すなわちネットの住人たちの下を離れていく巣立ち。電車とエルメスが彼らの前から、銀河鉄道に乗って旅立っていく姿こそ作者が見せたかった所なのだろう。確かにオタクたちに対し擬似恋愛でなく、本当の恋をしろよというスパイスはまぶしてあるが、まるで「新世紀エヴァンゲリオン」のラストのように、「現実へ帰れ」と言わんとしている気がする。
あまりに劇甘な展開ではあったが、あくまでファンタジーと割り切って楽しむ事ができた。特に映画やアニメのパロディの織り込みは尋常ではない。最終回、初めて姿を現す電車男の母親。しかもそれがガンダムのマチルダ中尉そのものだったのには恐れ入った。すなわち当時声をあてていた戸田恵子自身のセルフパロディでもあるのだ。再三マチルダをモチーフにしたシーンが多かったが、おそらく脚本家の嗜好の最たるもの。実は脚本家自身がやりたかったのはコレだったのかもしれない。
だがプライムタイムのドラマにガンダムのパロディを見る楽しさの一方、疑問は少なくない。これがドラマとは言い難い点も多い。ここ数年、ゴールデン、プライムタイムのドラマはマンガの原作か、奇をてらった企画が多くなった。奇しくも月9では近々「西遊記」が企画されているという。これらの現象はマルチな展開(書籍=>映画=>ドラマ)となった今回の「電車男」といい、テレビにおける企画の枯渇の事態を表している。ひと昔のような普通のドラマがウケなくなった一方、いつまでこの傾向が続くのか興味は尽きない。
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コメント
TBありがとうございました。
本編は終わってしまいましたが、劇団ひとり演じる松永氏の外伝がありますね。
どんな話になるのか、ちょっと楽しみです。
個人的な意見としては、続編は作らず、外伝もこれ一本で終わりにして欲しいです。
投稿: taka_three | 2005/09/30 12:43
taka_threeさんこんにちは。
こちらこそTB&コメントありがとうございます。
>個人的な意見としては、続編は作らず、外伝もこれ一本で終わりにして欲しいです。
確かに続編は要らないですね。このドラマ、ある意味、あり得ないファンタジーですから、続いていく事でつまらなくなってしまうと思います(^^ゞ
投稿: でんでん | 2005/10/01 07:59