« さらば増田ジゴロウ、白井ヴィンセント登場 | トップページ | あれから五年...「スピーカー工作の愉しみ」に思う »

2005/07/06

夏は「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」を観よう。

 ボクはここで文章を書く時、「映画を観る」「テレビを見る」と切り替えている。その境界は作品に没頭できるか否かのつもり。だから稀に「テレビを観る」と書く時があるが、それは余程その番組に思い入れがあるか、またはそれ相当の理由がある時にしか使わない。12年前の夏、フジテレビで「if~もしも」というドラマシリーズが放送されていた。この時の一篇は今も忘れない。岩井俊二の「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(詳しくは作品コラム参照)が放送されたのだ。この時まさに「テレビを観る」という言葉が正しい作品だった。

 ホームページの中で何度もベタ褒めした作品だが、もう一度触れてみたい。物語は至極シンプル。まず主人公は片思いの子とのデートを賭けるも、水泳勝負で負けてしまう。そん中、夏休みに突入した主人公たち小学生の小さな疑問、タイトルの通りに花火の形、実態はどうなのかと調べに行こうと言い出した。この二つのストーリーが平行して流れ、しかも甘酸っぱいクライマックスを迎えていく。そしてこの"甘酸っぱさ"があるからこそ、今もこの作品は支持されていると思うのだ。

 この作品は非常に手の込んだ作品である。形はテレビドラマだが、手法は映画。映像も当時ゴールデンタイムのタブーとされたフィルムタッチ。だがそれが功を奏し、独特のドラマを形作った。実はここで使われた手法こそ、今も岩井俊二作品に息づく独特の世界感を生んでいる。一時間のドラマだが、放送は正味45分程度のもの。だからこそ物語に注ぎ込まれたもの全て、この作品の密度の濃さに反映されている。このドラマで岩井俊二は映画監督の足掛かりとなった。そして今もこのドラマを越える一時間単発ドラマを知らない。

 さて何で「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」を取り上げたか。最近、あまりにも陰惨な学生の事件ばかりで、ニュースを見ていてとてもつらかったからだ。社会人生活はもっとツライ。年齢の差こそあれ、学生時代とは楽しいものだったと思い返している。そんな時、この作品を思い出した。その甘酸っぱい1ページが、この作品には集約されているように思うからだ。

 フジテレビはドラマ化した「海猿」や「電車男」を放送するのもいい。でもわずか一時間、単発でこれほど良質なドラマを、何故たった一日だけでも放送しないのかと思う。スキャンダルや殺伐とした今を報道するよりも、視聴者に対し余程意義のある一時間が得られよう。個人的にフジテレビはこのドラマを毎年夏、ゴールデンタイムに放送する義務があると思う。もしそうならなくとも夏はみんなで「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」を観ようではないか。そんなムーヴメントが起こるのを夢見ています。

yokokaramiruka

utiagehanabi

|

« さらば増田ジゴロウ、白井ヴィンセント登場 | トップページ | あれから五年...「スピーカー工作の愉しみ」に思う »

コメント

TB有難うございます。
まさにまたこの季節が来たといった感じです。
サントラ聴くと情景が目に浮かびますね!

投稿: マヒルニミタユメ | 2005/07/08 01:53

マヒルニミタユメさんこんにちは。
コメントありがとうございます。

夏が来れば思い出す...ってな感じの作品、音楽ですよね。
またサントラ、聴いてしまいそうです。
もちろん作品も(^^ゞ

投稿: でんでん | 2005/07/08 06:25

でんでんさん、こんばんわ。
「映画を観る」「テレビを見る」の使い分け、僕も一緒です。"観る"には作品を鑑賞する意味があると、勝手に思っているからです。そういった意味では、テレビはどうしても、見る、になってしまいます。

「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」いつも観たいと思っているのですが、まだ観ていません。
何となく、DVDで見るものではないと感じているからです。
どこか、映画館でやらないですかね。

投稿: あ~る | 2005/07/10 02:54

あーるさん、いつもコメントありがとうございます。

>何となく、DVDで見るものではないと感じているからです。

そうなんですよ。だからこそテレビで...って思うんです。それでいて、今子供たちが観られるドラマって案外無いんですもの。

投稿: でんでん | 2005/07/10 07:34

はじめまして、トラバ&コメントありがとうございます。

>夏はみんなで「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」を観よう
>ではないか。そんなムーヴメントが起こるのを夢見ています。
今回この記事に関するトラバ・コメントの多さに、そのムーブメントがすでに実在していることをひしひしと感じています。12年も前の単発TVドラマで、すごいことですね。

投稿: あひる | 2005/07/10 22:18

あひるさんこんにちは。
こちらこそTB&コメントありがとうございます。

>そのムーブメントがすでに実在していることをひしひしと感じています。

ボクもひしひしと感じています。あんな26時間テレビなんかより、1時間のこのドラマのほうがたくさんの想いを与えてくれるのに。だから買収されかかるんです、フ○テレビは...(苦笑)

投稿: でんでん | 2005/07/10 22:23

>あんな26時間テレビなんかより、
あっそんなこと言われたら、(以下小声)毎年8月15日前後に必ず放映するあの反戦アニメ映画より、とか言いたくなってしまうではないですか。

でもほんと、26時間も費やさなくても、痛々しい姿を延々見せつけなくても、それ以上の何かをよっぽどたくさんもらえますよね。

投稿: あひる | 2005/07/10 22:44

あひるさん、どもっです(^^ゞ

それが大人の事情ってヤツですかね(笑)。
「打ち上げ花火...」の中でも大人の事情というか、ワガママなとこが出てましたけど。

ボクはこのドラマ、子供に観て欲しいんです。
子供も安心して観られるドラマって貴重ですよね。

投稿: でんでん | 2005/07/10 22:58

>子供も安心して観られるドラマって貴重ですよね。
貴重ですね。ほんとに。
子供の食いつきはどうなのかな?面白がってくれたら嬉しいですね。

投稿: あひる | 2005/07/11 17:22

あひるさんこんばんは。

>子供の食いつきはどうなのかな?

腐れ縁の友人が、いつか子供に見せたいなぁって言ってました。どうなったのかなぁ。ホント、見て喜んでくれるといいですね。

投稿: でんでん | 2005/07/11 22:50

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/58265/4857597

この記事へのトラックバック一覧です: 夏は「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」を観よう。:

» 僕の岩井俊二の印象 [new A.A.P.]
エントリ、打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?にちょっとだけ勝手に言わせてもらいます(Blog版)さんからトラックバックあったんで、もうちとつっこんでみますかね。 岩井俊二が人気あるのはよく分かります。僕もラブレターとか何回も見たし。ただですねぇ。こういう..... [続きを読む]

受信: 2005/07/06 23:38

» 今年の花火 [Lost and Found]
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? 今年の花火をどうするか?と考える季節がやってきましたねぇ。 [続きを読む]

受信: 2005/07/06 23:51

» 『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(ケーブルTV)。 [BuzzStyle。]
数年振りに見ました。 良いですね。誰もが切なくなった幼少時の思い出映画で後味良いですよね(笑) フジテレビの『if…もしも』と言う実験的なパラレルワールドのドラマ形式でオンエアされたのを、ちゃんと見た(正確にはたまたま見た)のを覚えてます。 確か学校の夏休みも終わる8月後半のオンエアだったとじゃなかったかな? 「ゴールデンタイムに似付かへんドラマやなぁ〜」と言うのが第一印象で、意外にも良く出来たドラマだと思いまし�... [続きを読む]

受信: 2005/07/07 13:01

» 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? [がりゅう日記]
カリフォルニアの夏は日本の夏とは随分違う。過ごしやすいことは確かなのだが、夏に入道雲も見られず夕立も起きず、冬に雪が降らない状態だと、四季の変化を感じないうちに日付の数字だけが過ぎていく。 今年も気がつくともう7月になっている。なんとなく日...... [続きを読む]

受信: 2005/07/09 17:31

» 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? [あひるちゃんがゆく]
25日は日本映画専門chで『24時間岩井俊二特集』でした。 [続きを読む]

受信: 2005/07/10 21:51

» 打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか? [なつやすみ]
真夏の夜の冒険と「駆け落ち」――岩井俊二の映像美と、淡い恋心をあざやかに描いた脚本が光る傑作。 1993年 岩井俊二監督。テレビドラマ「if もしも」の作品を、後に劇場公開 「夏休み」的な映画といえば、この作品が一番に思い浮かぶ。夏休みの小学生を主人公として、小さな港町で行われる夏祭りの情景に、少年たちの小さな冒険と、淡い恋心のような揺れ動く感情、という二つの要素を見事に織り込んだ作品。 夏休みの登校日、ノリミチ(山崎裕太)は、クラスメートのユウスケとプールで水泳の勝負をする。最初はリードしていたノ... [続きを読む]

受信: 2005/08/16 23:39

« さらば増田ジゴロウ、白井ヴィンセント登場 | トップページ | あれから五年...「スピーカー工作の愉しみ」に思う »