ソニーのケツの穴
PSPが好調のソニー。しかし今年のソニーを救ったのはスパイダーマンだった。今やかつての電器製品だけのソニーではない。その傘下には映画配給、金融、生命保険他、多岐にわたる。だがそのどれもが好益なわけではない。しかもソニーを救ったのは『スパイダーマン2』の興行収入であり、その先にある続編『スパイダーマン3』が、逆にソニーの足下をぐらつかせる存在になるかもしれない。そもそも映画産業こそ最も投機性、ギャンブル性の高い業種である。一時期、松下がユニバーサルを傘下に入れていた時期があったが、その難しさから結果的に撤退した。ソニーがそれらを克服したともいえるのだが、常に興収が見込める作品を確保する事は難しい。少なくともスパイダーマン2の一方で、チャーリーズエンジェルみたいな駄作が生まれる以上、その危険性は常に持ち合わせている。
このコラムで何度も触れてきた事だが、ソニーにかつての輝きは無い。ソニーのビックリ箱は他社に奪われた次第。特にデジタル音楽プレーヤーでは、アップルのiPodに全くしてやられた。しかも先手を取られたアドバンテージよりも、その後に参入したソニーのケツの穴の小ささばかりが目立ってしまった。それは再生フォーマットを一般的なMP3対応でなく、独自路線のATRAC3を中心においた事だ。そしてシェアの差を開かれる事を嫌ったソニーは前言撤回、MP3対応を発表。クリスマス、年末年始商戦に間に合わせる形で帳尻あわせしてきた。心の広いソニーファンは『柔軟なソニー』と評価するだろうが、その行動こそが今のソニーのケツの穴の小ささの裏づける事件でもある。
確かにPSPが好調のソニー。PSPにも音楽再生機能がある。当然MP3にも対応しているわけで、今の世の中ならまっとうな選択。しかしその動画再生機能には参った。なにせMPEG4ながらも『メモリースティックビデオフォーマット』だけという特別な仕様。そもそもMPEG4だけでも多岐に渡り単純でないのだが、その他のフォーマットは専用の変換ソフト(Image Converter 2)を介さねばならない。しかも当然、変換時間にはそれ相当の時間を要する。PSPを映像ビューアにと考えていた筆者には青天の霹靂。だから今もってPSPを積極的に買おうと思わない。
SCEによるとPSPは『これから10年作り続ける商品』に位置づけているという。そもそもソニーの技術力をもってすれば、内蔵ソフトウェアでMPEG4全フォーマット再生対応は可能なはず。しかしそれをしないのが今のソニー。あくまで『他社フォーマットを再生するなら時間を掛けて再変換して下さい』と言い張る。ソフトウェアアップデートが可能なPSP。10年待てばそこまでしてくれそうな気がするが、初代PS2でDVD再生のアップデート対応、プログレ対応等が早々に断ち切られた経緯を考えれば、あまり期待は出来ない。とにかく今のソニーのケツの穴は小さい。
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